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まとめ

単糖(ぶどう糖、果糖、ガラクトースなど)は高い反応性を示し、蛋白質などの他の物質と容易に結合します。
血中ぶどう糖濃度(血糖値)や果糖濃度が高いとき、ぶどう糖や果糖は蛋白質と結合し、ぶどう糖結合蛋白質や果糖結合蛋白質が生じます。
ぶどう糖や果糖と結合した蛋白質を糖蛋白質と総称します。
蛋白質の中には、糖蛋白質になると、機能が低下したり、失うものが多種あります。
脳などの組織は、飢餓状態に陥らない限り、ぶどう糖を唯一のエネルギ源として利用しますが、それらの組織はぶどう糖合成能力を持っていません。
健常な状態では、血糖値は血糖調節システムによって一定範囲(正常範囲)に維持され、ぶどう糖を必要とする脳などの組織へ供給します。
ただし、ぶどう糖以外の単糖の血中濃度を調節するシステムは存在しません。
正常血糖値でも、糖蛋白質は生じますが、新陳代謝(古いものが新しいものによって入れ替わること)によって、糖蛋白質は分解され、糖を結合していない蛋白質が新しく合成されます。
血糖値が高いほど、より多くの糖蛋白質が生じ、生じた糖蛋白質が多くなり過ぎると、新陳代謝が追いつかなくなり、糖蛋白質が次第に増加します。
本来の自己に存在しない糖蛋白質の中には、偶発的に、抗体を生じる危険性があります。
事実、1型の糖尿病患者の多くは、膵臓ランゲルハンス島のβ-細胞(インスリン産生細胞)の特異的な蛋白質に対する抗体(自己抗体)を持ち、その自己抗体がランゲルハンス島に致命的な傷害を与えていることが知られています。
糖蛋白質が増加しない最高血糖値が、臨床検査における正常な血糖値の上限です。
澱粉やグリコーゲンは多数のぶどう糖の結合物であり、消化によってぶどう糖を生じます。
一方、砂糖は果糖とぶどう糖へ消化されます。
消化管中で、澱粉はゆっくり消化・吸収されるので、血糖調節システムは十分に作用し、血糖値は正常範囲に維持されます。
一方、砂糖は迅速に消化・吸収されるので、高濃度の砂糖を摂取した直後には、血糖調節システムの作用が追いつかず、短時間、血糖値は著しく高くなります。
血糖調節システムを構成している蛋白質が果糖やぶどう糖と結合し、生じた糖蛋白質の蓄積量が増加するにつれて、血糖調節システムが次第に弱体化されます。
血糖調節システムの弱体化につれて、血糖値は次第に高くなり、血糖値が高くなるにつれて、血糖調節システムの弱体化が加速されます。
血糖値が正常範囲を越えた状態が高血糖症(糖尿病)です。
高血糖症は他の多くの生活習慣病 (成人病) を引き起こし、また、それらの悪化を促進します。
例えば、過剰の糖蛋白質が神経細胞の蛋白質であるときインポテンス(陰茎と陰核亀頭の勃起不全:ED)、そして眼の水晶体中の蛋白質(クリスタリン)であるとき白内障になります。
ぶどう糖が蛋白質の一種であるコラーゲンと結合すると、結合ぶどう糖を介して、他のコラーゲンが結合し、結果として、複数個のコラーゲンが架橋され、糖化最終産物(AGE)が生じます。
AGE を形成している架橋は老化架橋と呼ばれます。
果糖やガラクトースも、ぶどう糖と同様に、老化架橋を形成します。
AGE は硬い黄褐色の物質であり、皮膚の肥厚、硬化および黄褐色化、動脈肥厚、関節硬直、筋力減退、臓器不全などを引き起こします。
若者に比して、40 歳を越えると、老化現象の一つとして、蛋白質の新陳代謝の速度は次第に遅くなります。
現在の日本における平均的な食生活では、血糖値が正常範囲にあっても、その範囲の上限に近いとき、糖尿病に罹らないためには、先ず、砂糖の摂取を極力控えることが大切です。
砂糖の代替え甘味料(ダイエット用甘味料)として、アスパルテーム(パルスイート)およびキシリトールがあります。
ちなみに、最近まで、ぶどう糖に比して、果糖は静脈注射に適した栄養素であると考えられていましたが、血中の果糖濃度が高くなり過ぎると、ぶどう糖と同様の障害が起こることが判明しました。

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1. 血糖
血液に含まれるぶどう糖 (D-グルコース) を血糖と云います。
血液に含まれるぶどう糖の濃度 (血糖濃度) は、中枢神経、肝臓、膵臓などからなる血糖調節システム(後述)によって、正常な健康状態(健常)では、食間の血糖濃度は約 5 mM (ぶどう糖 90 mg/血液 100 mL) に維持されます。

1・1. 血糖値


血液の血球成分(赤血球、白血球、血小板など)以外の部分(液体の部分)を血漿(けっしょう)と云います。
ただし、病院などにおける通常の検査(臨床検査)に使用する血漿は、微量の血液凝固阻害剤を含みます。
採取した血液を容器中で放置すると、血液は自然に凝固し、赤色の塊(血餅:けっぺい)の上に、淡黄色の液が生じます。この液を血清と云います。
血清は血液凝固因子(血液凝固に関与する蛋白質)を含みませんが、それ以外は血漿と同じです。
血液の臨床検査には、通常、血液凝固に関与する因子を測定する場合には血漿、そしてその他の場合には血清を使用し、血液全体を使用することはほとんどありません。
臨床検査の分野では、血糖濃度(血中ぶどう糖濃度)を血糖値と云います。
血糖値とは、血漿あるいは血清に含まれるぶどう糖の量を測定し、その測定値を 100 mL (mL:ミリリットル)当たりに換算し、mg で示した値です。
昔、血液成分の分析には、測定法の感度および精度が低いために、血液 100 mL 程度を使用しました。現在、血糖値の測定には、1 mL 以下の血液しか要りません。
今でも、日本の医学の領域では 1 dL (デシリットル)を使用する慣習があります(1 dL = 100 mL)。
臨床化学国際委員会は dL を使わないように勧告していますので、ここでは、1 dL の代わりに 100 mL を使用します。
通常の血液検査では、多種の測定を一度に行う目的で、通常、1 回に 5-10 mL を採血します。
血糖値の測定法には、多くの種類があります。代表例として、現在、比較的ひんぱんに使用されている種類を記します。
酵素(グルコースデヒドロゲナーゼ;グルコース脱水素酵素)を用いる方法: グルコース脱水素酵素法
酵素(グルコースオキシダーゼ;グルコース酸化酵素)を用いる方法: グルコース酸化酵素法
酵素を固定化した電極を用いる方法: 酵素電極法
過去、測定法の違いによって、測定値がかなり異なりましたが、現在、適当な標準物質の使用によって補正されているので、測定法および測定施設による差異はほとんどありません(測定法および測定施設間の誤差:<20%)。

1・2. 血糖値の正常と異常


     表 血糖値の正常と異常の判定基準

先進国の関連学会は、個々に、血糖値の適正(正常)と非適正(異常)に関する判定基準を設定しています。
日本を含む各国の判定基準はほとんど同じです。
判定基準によると、健常成人の空腹時血糖値は 70-110 mg/100 mL です。
健常成人では、澱粉やグリコーゲンなどの糖質を含む食物を摂取すると、食事 1 時間後血糖値は一時的に少し上昇しますが、約 2 時間後にはほぼ元に戻ります。
健常成人の血糖値の日内変動(空腹時と食後を含めた 1 日間の変化)は 70-160 mg/100 mL の範囲内にあります。
血糖値が上記の範囲内にある状態は正常型です。
血糖値が 50 mg/100 mL 以下に低下した状態は低血糖型です。
新生児の低血糖型の判定基準は、成人に比して低く、成熟児では 30 mg/100 mL 以下、そして未熟児では 20 mg/100 mL 以下です。
低血糖型の症状は次の二つに大別されます。
交感神経系の症状: 脱力、発汗、頻脈、動悸、震え、不安、空腹感、吐き気、嘔吐など。
中枢神経系の症状: 頭痛、低体温、視力障害、錯乱などの神経症状、けいれん、昏睡など。
空腹時血糖値が 140 mg/100 mL 以上である状態、あるいは食事 2 時間後血糖値が 200 mg/100 mL 以上である状態は高血糖型(高血糖症)です。
当然のことですが、糖質をほとんど含まない食事内容であるとき、たとえ高血糖症でも、食事 2 時間後血糖値は、空腹時血糖値に比して、さほど上昇しません。
高血糖型では、ぶどう糖が尿中に排泄されるので、高血糖型は糖尿病とも呼ばれます。
軽度の糖尿病では、空腹時血糖値が正常型あるいは正常型に近いこともあります。
血糖値が、空腹時に 110-140 mg/100 mL あるいは食事 2 時間後に 160-200 mg/100 mL であるとき(高血糖中間型であるとき)、ぶどう糖負荷試験によって、症状を判断します。
ぶどう糖負荷試験では、空腹時に、ぶどう糖 75 g あるいは体重 1 kg 当たり 1 g の水溶液を飲み、安静状態で 2 時間後の血糖値を測定します。
ぶどう糖負荷 2 時間後血糖値が 200 mg/100 mL 以上であるときは糖尿病、そして 110-200 mg/100 mL であるときは境界型糖尿病と判定します。
高血糖には次のような多くの原因があります。
膵臓障害、慢性肝疾患、内分泌疾患、脳圧亢進状態、肥満症、過食、アルコール過飲、胃切除後の食餌性高血糖、発熱性疾患、一酸化炭素中毒、薬剤による血糖上昇、など。
けれども、砂糖の消費量と高血糖症(糖尿病)の発症率がほぼ比例していることを考えると、上記の原因の多くは原因ではなく、結果です。
血糖値の正常と異常の判定基準は、特に、正常型の範囲より高い場合、その状態を放置すると、高血糖境界型を経て、高血糖型へ進行する危険性が非常に高いことに基づいて設定されています。
日本の現在、10 人に 1 人、60 歳を越えると 4 人に 1 人が糖尿病であり、しかも糖尿病の患者数はさらに増加しつつあります。
留意点は、日本人の平均的食生活では、遺伝的欠陥がなくても、年齢が上がると共に、血糖値は高くなることです。
年齢 40 歳を越えると、たとえ血糖値が正常型であっても、空腹時血糖値が 100 mg/100 mL 以上であるとき、同じ食生活を継続すると、5-10 年後には、高い確率で糖尿病を発症します。
特に、砂糖、ぶどう糖や果糖の多い飲料、菓子、煮物、甘い果物などの習慣性摂取は糖尿病の発症を加速します。


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